マクリ

与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」第1扇

冨田鋼一郎
H61.0 x W38.0 (cm)

「万歳図」
 浪花四明筆 白文方印「淀水」 朱文方印「朝滄」

もともと新年から六月までの行事風俗図の六曲一隻の屏風だったものの第一扇。新年から六月までの行事風俗図六点である。もしかしたら秋冬の六点と揃いで六曲一双だったのかもしれないが、秋冬の存在は明らかになっていない。

若き蕪村が、新年の万歳を描いたもの。やってきた万歳師のそばに集まる人々四人。遠方に大きな門松。遠近を無視している。朱・藍・茶などの淡彩が目にやさしく届く。作者の興味は、人々へ向かっている。名もなき人々へのこまやかなまなざし。やさしい情愛を感じるのは、蕪村の性格によるものであろう。蕪村も絵師として立つか、俳諧師として立つが模索の時代であり、この作品からは衒いのない、健康な初々しさが伝わってくる。

落款の「浪花四明」と「淀水」「朝滄」について。
印章の「淀水」「朝滄」は、どちらも蕪村が青春期を送った関東遊歴時代にのみ使用していた印章のうちのふたつ。
署名の「浪花四明」は、みずからの出自は上方であることを明らかにしたもの。
「四明」は、比叡山のこと。「浪花」は、「浪速」「浪華」などさまざまな表記を用いている。

「四季行事風俗図(春夏)」六点の詳細は、著書『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2018年)を参照ください。

なお、「四季行事風俗図(春夏)」六点は、2020年9月8日の「開運!なんでも鑑定団」で放映されました。

あわせて読みたい
与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」まとめ
与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」まとめ
与謝蕪村(よさ ぶそん1716-1783)

18世紀日本を代表する画・俳の巨匠。

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました