与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」第6扇
与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」第5扇
冨田鋼一郎
「端午節句図」
浪花四明筆 朱文方印「四明山人」
端午の節句である。風薫る初夏、揃いのゆるやかな法被を着てハチマキや帽子をかぶった三人の大人が大きな鯉幟(こいのぼり)を揚げる場面。爽やかな風を受けて大きな鯉が生き物のようで妙にリアルである。
烏帽子に帯刀した子ども、ざんばら髪の女の子と唐子風の男の子が、邪気を払う菖蒲を束ねて持って取り囲んでいる。帽子やハチマキや浴衣のブルーと代赭の薄い赤が鮮やかである。
鯉のぼりを端午の節句に飾るのは、激流の「竜門の滝」を登り切った鯉が竜となるという故事(『後漢書』)に因み、わが国では江戸時代に始まったとされる。
この図によって江戸中期には大人三人がかりであげるほど大きな幟であったと想像できる。子どもたちが輪になって何事かを唱えているように見えるのに対して、大人たちが幟立てに懸命になる姿もほほえましい。
高紐(たかひも)にかくる兜や風薫る
鯉幟の尾が風に吹かれて大きくしなっている。凛々しい若武者が鎧の高紐に結びつけた兜に緑の上をわたる南風がさわやかに吹きつける句を添えてみるのも楽しい。
なお、「四季行事風俗図(春夏)」六点は、2020年9月8日の「開運!なんでも鑑定団」で放映されました。
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与謝蕪村(よさ ぶそん1716-1783)
18世紀日本を代表する画・俳の巨匠。
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