与謝蕪村筆「四季行事風俗図(春夏)」第3扇
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「花見図」
四明 朱文方印「四明山人」 白文大方印「男子生有四方志」
太陽が一段と力を増し、若草の匂いをふくんだうららかな大気が人々の心をなごませる。
春に寄せる蕪村の想いは、桜の花見で頂点に達する。満開の桜木の下でゴザを敷いて、お花見する庶民の姿が描かれている。弁当と酒の入った瓢箪がころがって見える。
後ろ姿の女性は三味線を抱えて奏でている。穏やかな春の日差しが降り注ぐ中を適当に酔いがまわってきたのだろうか、三味線に合わせて踊り出したのは男二人。
一人はもろ肌を脱いで、赤いハチマキと赤い扇子をもって浮かれている。もう一人は串刺しの団子を右手の立ち姿で花見も良いが団子も捨てがたい。
互いに声をかけあい、歌いながらまずは踊らずにはいられない。満ち足りた目や口の表情まではっきりと見えて、彼らの吐く息や掛け声や足音まで聞こえてきそうだ。
空色と群青色の二色のブルーの着物も鮮やかである。桜木の太い根元からは細い枝が伸び、上方には薄褐色の柔らかな若葉をまとった満開の枝花が添えられている。
空を見上げれば白雲がゆっくりと流れゆく。春風駘蕩とした気分があふれる画である。
又平に逢ふや御室の花ざかり 蕪村
きのふ暮けふ又くれてゆく春や 蕪村
楽しかった花見を終えて、早々と桜が散ってしまえば、ことしの春はもう過ぎ去っていく。一日ごとに募る惜春の情。
美しいもの、好きなことにうつつを抜かし、身を任せていると、日々の勤めの方はついつい疎かになってしまう。このような人こそ、奥ゆかしい風流人だろう。
白文大方印「男子生有四方志(だんしせいあり しほうこころざし)」の遊印について一言。
男子に生まれたからには、四方に関心をもって志を遂げるべく努力しよう。遊印に込められた蕪村の願いは、詩・書・画の三芸に刻苦勉励を重ね、生涯にわたって「四方志」を忘れず、生活を、人生を虹のように美しく描ききったことで見事に果たされたということができよう
なお、「四季行事風俗図(春夏)」六点は、2020年9月8日の「開運!なんでも鑑定団」で放映されました。
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18世紀日本を代表する画・俳の巨匠。