ドイツ銀貨10マルク古銭文化都市ワイマール記念
冨田鋼一郎
有秋小春
元日
雪やけさ草木のうへの花の春
春草
あさつゆに秋見ぬいろやはるのくさ
承応二年 法眼玄陳 印
歳旦句「元日」、春興句「春草」。両句ともに、新年を迎えて、あらたまった気持の中ですがすがしさがあふれ出るようだ。
元旦の朝、あたりの草木の葉の上にうっすらと雪が積もった。朝日に輝き、一面に白い花が咲き乱れたようだ。新年の改まった気分と重なり、春がここにもやって来たことを実感する、なんとすがすがしいことか。
朝露にしっとりと濡れた春草の葉。その何ともいえないこの清新な色は、秋には決して見られないものだなあ。
承応二年(1653)63歳春の染筆。
この作品の作成時期は、言葉あそびや滑稽を主眼にしていた。このような素直で平明な句があるのはうれしい。
可憐な春の草らしい絵をふたつあしらった和紙に、玄陳らしい柔らかな筆致で染筆されている。
現在のところ、「法眼玄陳」と記した連歌作品は、承応四年(1655)が古いとされているが、さらに2年早いという新しい発見である。
江戸時代前期の連歌師。里村玄仍(げんじょう)の長男。画もよくし、和泉堺にすんだ。75歳。