東ドイツ記念通貨5マルク白銅 未使用ヤーン没後125年記念
冨田鋼一郎
有秋小春
寒空やただ暁のみねの松 暁台
朝まだき凍てつく冬の薄暗い空をバックに、峰に立つ一本の松の木。シルエットを見るようだ。 空も大地もモノクロ写真を見るような風景から次第に明るく色づいてくる。空が明るくなるに従って、一層松の木の黒さが際立ってくる。 背景の明るさと松の黒のコントラストが鮮明だ。 蕪村の明るい油絵の世界というなら、暁台のこの句は水墨画の世界である。「暁台句集」入集
山中でただ一本孤高を保つ松に、厳しい世間の荒波の中での屹立する自分の姿を投影させているのかもしれない。
この句の魅力は、リズムの良さ。<さむぞらやただあかつきのみねのまつ>
「らやただあか」の六つのア音が並ぶ。一読、ア音の連なる単調な低い音調が、作者の内面をみつめる心境と重なる。
暁台が“暁(あかつき)”を好んで用いたことは、暁台句集を紐解くと気づく。
江戸中期の俳人。久村氏とも。別号暮雨巷など。名古屋の人。天明俳諧中興の士を以て任じ、二条家から花の下宗匠の免許を受けた。蕪村らと交流。桜田臥央編「暁台句集」がある。