会津八一筆書銅板二枚
冨田鋼一郎
有秋小春
宇宙無双日
乾坤只一人
乙未四月 冬青 印「冬青」
乙未:昭和30年(1955年)
小林勇の大作「ジャーマンアイリス」。賛は、「この宇宙に一日として同じ日はない、同様に、この天地には私は私しかいない」の意。
NYメトロポリタン美術館のゴッホの油彩「ジャーマンアイリス」とは比べ物にならないが、冬青の「アイリス」も捨てがたい味がある。牡丹と並んで、豪華で贅沢な花である。
絵筆をとってからまだ数年の作である。独学ではじめた。「私は自分がよくならなければいい絵は出来ないと信じている。」自分に厳しい強烈な精神の持ち主だった。
小林勇の謦咳に接したことはない。しかし、彼の優れた人物評伝やエッセイからその個性あふれる人柄、ものの考え方・感じ方を知り、生き方のヒントを与えてもらった。強烈なインパクトを受けた。私にとって私淑した人物のひとりと言っていい。
岩波書店元会長・随筆家。号は冬青。幸田露伴、齋藤茂吉、寺田寅彦など名だたる知識人と広く交流し、親しく交際して培われた人物評伝は余人をもって換えがたい美しい作品となっている。画を描くことを生涯の趣味とした。名エッセイストとして、『遠いあし音』『小閑』など随筆も多数。