骨董品

望月省三筆絹本水彩「岸辺の風景」扁額

冨田鋼一郎
H28.2 x W57.0 絹本 H40.6 x W88.0 額

サイン:S. MOCHIDZUKI. 1917

1917年(大正6)作 画家26歳、初期の最も良い時代の作品。
落ち着いた作品だ。100年前までにはどこにでもあったような日本の風景。初秋なのかひっそりとした夕暮れ時、どこかで見つめたことのあるような懐かしい風景が広がっている。

眼前には岸辺に高い松の木が三本、曇り空にシルエットのように浮かんでいる。
とっさに思い浮かんだ句。

寒空やたゞ暁の峯の松 暁台

岸にはボートが寄せてある。釣り船なのだろうか。左手の湾奥には、藁ぶきの家が二軒。右手のはるか彼方の沖合では、釣り人を乗せた6隻のボートが小さく見える。波はなく、おだやかな日和。思わず絵の中に入って、ボートに乗って、釣り仲間に加わりたいくらいだ。空には雲の合間からうっすらと月だろうか。
渡辺崋山の「四州真景図」の鹿島あたりのスケッチも思い浮かべる。

1917年の前年に漱石没。世界では、第一次世界大戦のさなか、ロシア革命で世界は激動の時代だ。

望月省三 (もちづきしょうぞう1891-1954)

明治23年栃木県に生れ、日本水彩研究所に学び、日本水彩画展等に、主として水彩による風景画を出品、堅実な作風をみせていた。 帝展・文展・光風会展に出品、大正2年、丸山晩霞・河合新蔵らと「日本水彩画会」の創設に参画、以降同展を中心に活躍した。絹本に水彩 約57×28cm(本紙) 画面左下にローマ字サイン「S.MOCHIDZUKI.1917」とあり大正6年、画家26歳の初々しい作品! 大正3年「みずゑ」に6点の図版が掲載された。画家の最も充実した時代の作品。

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました