読書逍遥

読書逍遥第212回 『オランダ紀行』(その1) 街道をゆく35 司馬遼太郎著

冨田鋼一郎

『オランダ紀行』(その1) 街道をゆく35 司馬遼太郎著

最初から意表をつく話ではじまる。

著者の頭の中で、咸臨丸、エジソンの電球、杉田玄白のターヘル・アナトミアとつながって、ようやくオランダにたどり着く。

咸臨丸で勝海舟、福沢諭吉らが(そして通訳としてジョン万次郎も)アメリカに西海岸にたどり着いたのは、安政7年(万延元年1860)の春。

エジソンが実用的な電球を発明して、世界中を明るくするのは、咸臨丸の渡米よりも19年後のこと。

さらに杉田玄白(1733-1817)がオランダ語の解剖書にある精密な解剖図に魅了される。

解剖図の話から、ここでまたお得意の脇道にそれる。

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“ついでながら”、絵画が純粋芸術などとされるのは近代に入ってからで、それ以前は–宗教画以外は–建築、機械学、医学といった諸技術の良き伴侶の一技術であった。
解剖学の歴史は、絵画に助けられて発達した。特に絵画ミケランジェロ(1475-1564)の精密な解剖図の出現によって飛躍したと言われている。

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いつの間にか読者は著者の世界に引き込まれていく。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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