読書逍遥

第41回「知の旅シリーズ7」世界責任編集・森本哲郎

冨田鋼一郎

「知の旅シリーズ7」世界責任編集・森本哲郎

『イギリス 女王の国の伝統と流行』

まだ先日の彼の地の国葬の余韻に浸っている。

明治以来、日本はイギリスに多くを学んだ。「此国(イギリス)の文学美術がいかに盛大で、其盛大な文学美術が如何に国民の品性に感化を及ぼしつつあるか」を漱石は痛感し、それにくらべて日本の社会の有様が何とも情けなく思われ、暗澹たる思いに沈んでいる。
それから一世紀近く。日本は大いに変わり、イギリスもまた変わった。だが、私たちの手本だったイギリスを本当に理解しているだろうか。英語を勉強しても、イギリスの歴史、文化、そして品性を正確に認識しているだろうか。(森本哲郎)

イギリスの大学は、学問と社交とによって人間をつくるところだ。職業人をつくるのでもなければ、学究をつくるのでもない。英国紳士をつくるところなのだ。

そのうちでもオックスフォードとケンブリッジは特別である。アメリカから来た見物人が、こんな芝生をこしらえるのはどうしたらよいんだね、と訊ねた。訊ねられた人が生憎とそこの学長であったというのだが、ええ、毎日水をやりましてね、毎日芝刈機をかけます、それを八百年続けますのさ、と答えたというのは有名な話だ。(福原麟太郎)

歴史の浅いアメリカ人には八百年は想像すらできない伝統の重さだ。

オックスフォード大卒業者で思いつくのは、科学・経済啓蒙家、マット・リドレー(1958- )。彼のような幅広く奥行きのある知性を磨いた人物は我が国にはにわかに思い浮かばない。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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