読書逍遥第186回 『細胞』(上・下)(その5)ジッダールタ・ムカジー著
冨田鋼一郎
有秋小春
文章表現法についての本。
「学ぶとは何か」「インプットとアウトプット」「内言語と外言語」について思索に誘われる。
私の人生における<学び>には、三段階あったように見える。
第一線を離れてから私大教壇に立ち、68歳で漱石についての本を出した。どちらも初めての体験だった。
この二つの作業は、自分なりに「アウトプット」していることだと気づいた。
そう考えると、第一線で働いていたときも仕事で「アウトプット」していたと言えそうだ。
これに対して、学生時代は、与えられたことを詰め込むだけ。テストで記憶したことをそのまま吐き出した。一夜漬け、これが勉強だと勘違いしていた。
最近、インプットとアウトプットのバランスを上手にとる、ということを考えるようになった。
アウトプットの「語る」こと、「書く」ことを意識しながら、インプットの「聞く」こと、「読む」こと。この往復が、知識を本当に自分のものにすること、すなわち「学び」であると気がついた。