読書逍遥

読書逍遥第208回 『評伝 子規居士』柴田宵曲著

冨田鋼一郎

『評伝 子規居士』柴田宵曲著

風薫る五月に思い浮かぶ人物は正岡子規

爽やかな季節であるはずの皐月を、不治の病、肺結核の悪化に悩まされ、忌まわしい月となってしまった気の毒な人物。

最初に喀血したは1888年(明治21年)8月。鎌倉旅行最中。

翌1889年5月、最初の大喀血。水戸旅行後。学友の漱石が見舞う。

⭕️ 卯の花の 散るまで鳴くか 子規  子規
⭕️ 鳴くならば 満月に啼け ホトトギス 漱石

1895年5月、2回目の大喀血。従軍記者として日清戦争帰国船上で。

病とともに花を開かせた創作活動。もし抗生物質があれば、苦しまずにすんだはずだ。

正岡子規(1867-1902)
32歳、糸瓜忌9月19日。

柴田宵曲(しばたしょうきょく1897-1966)
俳人・歌人・随筆家・書誌学者。博識で、談話筆記・編集・校正に長じ、知友の著書の刊行に貢献した。

宵曲は、子規の書き方遺した膨大な文書を清書し、最初の『子規全集』大正期アルス版の刊行に貢献。子規に最も知悉した人物。裏方に徹したため、世に知られなかったが。江戸明治の文芸に関する博識、簡潔な文章には隠れファンが多い。

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冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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