読書逍遥

第36回『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』ビル・ゲイツ

冨田鋼一郎

『パンデミックなき未来へ 僕たちにできること』ビル・ゲイツ

シアトルのビル&メリンダ・ゲイツ財団本部に勤務する日本人の方から財団の仕事やビルの人柄について伺ったことがある。
「世界の医療格差からくる貧困解消」を目指す。ビルは問題解決への情熱がとにかく人一倍強い人だそうだ。

たとえばアフリカ大陸の妊婦死亡率の改善は大目標の一つ。数字で目に見える改善にどう取り組むか。
まず目標設定し、妨げになることを割り出し、穴を埋めるのに役立つありとあらゆる技術や手段を探す。

技術がなければ、研究機関や企業と新技術の可能性を模索する。
市場メカニズムがうまくいかないところに資金を投じ、税制や政策の整備を政府に働きかけて、技術を成熟させ、安価に大規模に市場に展開できるようにする。

ビルが思いついた核心的な疑問について理解を深めるために利用するのが、ワーキングディナー。
十数人の人を招き、食事と飲み物をだす。
質問をいくつか用意して、話をしながら考えはじめてもらう。
「これまでの仕事人生のなかで最もためになった会話のいくつかは、手にフォークを持ち、ひざにナプキンを広げて交わしたものだ」そうだ。

事業の年間予算は5,6千億円。世界から資金要請の申請が寄せられる。
この選別だけでも膨大な作業となるが、単に資金提供するだけの中間組織でなく、必要に応じてスタッフを張付けて支援体制を組む。
シアトルからアフリカの現地、各政府や先進国の諸機関のネットワーク、シリコンバレーのベンチャー企業との交渉などなど仕事は多岐にわたる。

ここは各種専門家を擁する巨大なシンクタンクNPOであり、一国に匹敵する執行部隊でもあるダイナミックな組織。

年によっては年間予算を大きく上回る金融投資利益が生じて財団の基金は減らないどころか増えることがあるそうだ。

因みにゲイツ財団はWHO へ10%の資金拠出をしている。アメリカに次いで第2位だ。英国、日本をはるかに凌ぐ。

「コロナを最後のパンデミックにする」。良い未来のために今自分ができる事は?

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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