第66回『炭太祇(たんたいぎ)の句 その6』
冨田鋼一郎
有秋小春
ローマ帝国全盛期の領土地図を眺める。「地中海はローマ帝国の湖」だった。
古代の地名を注意して書き留める。
ユリウス・カエサル、アウグストゥス、
マルクス・アウレリウスの時代が、「パックス・ロマーナ」の200年。
500万平方キロに人類4分の1が統治下に。
この地図は、当時の人々にとっての「世界」を示す。
イタリア全土、イベリア半島全体、ガリア(フランス)、バルカン半島全域、小アジア、レバント沿岸、エジプト、アルジェリアなどが高度にネットワーク化された超大国。
『中世ヨーロッパ全史』(ダン・ジョーンズ著)は、ヨーロッパ中世をローマ帝国の崩壊から説き起こす。優れたストーリーテラーだ。ギボン「ローマ帝国滅亡史」は晦渋を極めて素通り。
ローマ帝国の長い領土拡張と統治が繰り返された間、問われ続けたことは、「国家や社会のメンバーとしてよそ者を受け入れることは、集団の勢力と性格を強めることになるのか、それとも、弱めることになるのか」。
同じ問題は今でも形を変えて問われ続けている。日本は「よそ者」とどう向き合うかの選択で社会のあり方が決まるのだ。