読書逍遥

第98回 『中世ヨーロッパ全史』

冨田鋼一郎

『中世ヨーロッパ全史』(その2)ダン・ジョーンズ

ローマ帝国全盛期の領土地図を眺める。「地中海はローマ帝国の湖」だった。
古代の地名を注意して書き留める。

ユリウス・カエサル、アウグストゥス、
マルクス・アウレリウスの時代が、「パックス・ロマーナ」の200年。
500万平方キロに人類4分の1が統治下に。
この地図は、当時の人々にとっての「世界」を示す。

イタリア全土、イベリア半島全体、ガリア(フランス)、バルカン半島全域、小アジア、レバント沿岸、エジプト、アルジェリアなどが高度にネットワーク化された超大国。

『中世ヨーロッパ全史』(ダン・ジョーンズ著)は、ヨーロッパ中世をローマ帝国の崩壊から説き起こす。優れたストーリーテラーだ。ギボン「ローマ帝国滅亡史」は晦渋を極めて素通り。

ローマ帝国の長い領土拡張と統治が繰り返された間、問われ続けたことは、「国家や社会のメンバーとしてよそ者を受け入れることは、集団の勢力と性格を強めることになるのか、それとも、弱めることになるのか」。

同じ問題は今でも形を変えて問われ続けている。日本は「よそ者」とどう向き合うかの選択で社会のあり方が決まるのだ。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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