読書逍遥第172回 『私の先生 出会いから問いが生まれる』大澤真幸著
冨田鋼一郎
有秋小春
副題 生命と医療の本質を探る
原題 The Song of the Cell
An Exploration of Medicine and the New Human
ムカジーは「死」についてうまい比喩で語っていた
「人は、衰退と若返りの力の相対的バランスによって説明できる。死亡とは、強風にあおられたミサゴが、もはや空中にとどまれなくなるよう」なものという
「損傷と修復」「衰退と若返り」の絶え間ない闘いのなかで絶妙に保たれている空中ホバリング、それが生きている状態だ。
蕪村が270年前に描いた「燕とハイビスカス」の絵を思い出す。
その燕が生き生きしてみえる謎がわかった。空中ホバリングをしているからだ。まるで今日まで270年もの間、飛び続けてきた(これからも)かのようだ。
これこそが生きていることの証しではないか。