読書逍遥

読書逍遥第239回 『牛肉と馬鈴薯』 国木田独歩著

冨田鋼一郎

『牛肉と馬鈴薯』 国木田独歩著

吃驚(びつくり)したいといふのが、僕の願(ねがひ)なんです。不思議なる宇宙(人間を、自然を、そして、この世界のすべて)に驚きたいといふ願です。

僕等は、生まれて此の天地の間に来る。無我無心の小児(こども)の時から種々な事に出逢う。

毎日、太陽を見る。毎夜、星を仰ぐ。ここに於いて、この不可思議なる天地も一向不可思議でなくなる。生も死も、宇宙満般の現象も尋常茶番となってしまう。・・

僕の願いは、どうにかしてこの古び果てた習慣の圧力から脱(の)がれて、驚異の念を以て、此の宇宙に俯仰介立(ふぎやうかいりつ)したいのです。

☆☆☆☆

慣れは恐ろしい
この世に生を享けて以来、この地球にあまりに慣れ親しんできたので、何も不思議に思わなくなってしまった

「驚異の念」つまり「好奇心」を失わないこと
そのために、「吃驚(びっくり)」しなければ何もはじまらない

[ヤブミョウガ]
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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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