読書逍遥第167回 『私のニジェール探検行』森本哲郎著1982刊
冨田鋼一郎
有秋小春
著者55歳の力作!51歳で朝日新聞社を辞め、世界を精力的に旅して、矢継ぎ早に本を出した。旅のなかからたどり着いた思索の頂点として位置づけられるのが本書。
文明の根(ルーツ)にあるものは何かを知りたい。
・人間世界を動かしているもの
・1つの文明を他の文明へと置き換えるもの
・文明のドラマの筋書き(プロット)を書いているもの
それは、神!
いかなる神がどんな文明の筋書きを書いたのか。なぜそのようなドラマを仕組んだのか。
人間の歴史を考えるとき、改めて諸文明の主役とも言うべき神々の姿を思い返してみる必要がある。
☆☆☆☆
木村正三郎氏は文庫解説で、著者を「歩く哲学者、旅する芸術家」と最大級に賞賛する。
この解説文自体も、非常にコクのある味わうべき文章になっている!
この解説がついているおかげで、一層愛着のある本になった。
「森本哲郎さんは、歩く哲学者である。異国の地を歩きながら考え考えながら歩き、自ら壮大な文明論を築き上げることのできる生きた哲学者でもある。そのエネルギー、その豊かな体験、その該博な知識にはほとほと感心してしまう。
頭だけで外国の書物などをよく勉強する学者は、たくさんいる。しかし、足で稼ぎ、足で体験しつつ、いわば全身で考え、異なった諸外国の文明を常に肌で実感することによって、おのずから骨肉化した、誰の心にも奥深くまで響く文明論を、世界を場に展開できるのは、森本哲郎さんただ1人である。
氏の文体は、読者1人に向かって、説くが如く語るが如くであり、読み手の心を掴まないではおかない。
私たちは本書を通し、森本哲郎さんの歩みと共に、美しく生き、美しく考えることを、これからの価値観の基本としたい。森本さんを先達とも友ともできることは、誠に幸せであると思う。」