読書逍遥

読書逍遥第183回 『細胞』(上・下)(その3)ジッダールタ・ムカジー著

冨田鋼一郎

『細胞』(上・下)(その3)ジッダールタ・ムカジー著

副題 生命と医療の本質を探る
原題 The Song of the Cell
An Exploration of Medicine and the New Human

「発見の物語」
私たちは誰もが、あなたも私も、始まりは1個の細胞だった。生物はすべて同じ物質的な単位からできている。

医学の歴史は、思いつきと工夫の積み重ねのドラマだ

○人間が、独立した生命の単位でできていることにいつ気付いたのか?
○その単位が、体のあらゆる機能の基盤だということにいつ気付いたのか?
○病気とは、細胞の病理がもたらすものだといつ気付いたのか?

16世紀の医学は、解剖学と病理学から成り立っていた。解剖学が先に進み、病理学は後に続いた

目に見えるものの観察(人体解剖)から始まり、病理学の目に見えないものの探究(細胞)に進む

1543年 自然観察の勝利
→ヴェサリウス『ファブリカ(人体の基本構造)』 人体解剖学を医学の中心に据えた

→同じ年、コペルニクス『天体の回転について』 太陽を天文学の中心に据えた

「病理学」は遅々として進まなかった。
目に見えないものは気づかない
→地図のない無秩序の宇宙のようなもの

[16世紀から17世紀にかけて]
病気の原因は「瘴気(しょうき)」
汚染された空気や下水から拡散される毒性の気体ではないか

マラリア 「悪い空気」の意味
イタリア語malaとariaから成り立つ

[18世紀から19世紀を通して]
病気を説明づける理論を探し続けた。

肉体的解剖学に基づいたものだった。それぞれの病気は、肝臓や胃、脾臓といった個別の器官の機能異常であるとした

人間の病理を体系的に捉えることは可能なのだろうか。もしかしたらその答えは肉眼で見える構造ではなく、肉眼では見えない構造にあるのではないだろうか。

目には見えないものに迫る

ルドルフ・ウイルヒョー(1821-1902)

「全ての細胞は細胞から生じる」
「真の知識とは、自分の無知に気づくことです」

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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