第21回『幸福論』バートランド・ラッセル
冨田鋼一郎
有秋小春
冒頭に日本の総人口長期トレンドのグラフがある。これは示唆に富むものだ。
明治以降の人口カーブは、ジェットコースターのような曲線を描いている。
人口増加を山登りに例えるなら、明治以降の登りは「集団で一本の道」を登り、山頂というゴールを目指してきた。
平成で山頂まで登り詰めれば視界は360度開ける。これからは集団でなく、個人がそれぞれ好きな道を選び、歩めばよい。目的地そのものが多様化していく。
登りと下りの価値観は逆転している。人生後半には、後退りすることに価値を見出そう。
福沢諭吉(1835-1901)は、江戸と明治の二つの異なる時代を生きたことを「一身にして二生を経るが如し」と表現した。我々の世代も諭吉に劣らず「一身にしてニ生を」生きている。
[登りの価値観]
一つだけのモノサシ もつと、もっと。
効率性・生産性・競争力一辺倒、科学技術イノベーション、投資拡大、経済成長偏重
[下りの価値観]
人それぞれの美しい生活。
改めて科学技術は何のためにあるのかが問い直される。
次の蕪村の句は、これからの新しい価値観を象徴するようだ。
⭕️不二颪(おろし)十三州のやなぎかな
蕪村
富士山の見える国は十三あるといわれる。春風が富士の頂から吹き下ろすと、十三州の