読書逍遥

第80回『月は東に』森本哲郎

冨田鋼一郎

『月は東に』森本哲郎

辺りから騒音がしない静かな休日です。

この本から蕪村と漱石への視点をたくさん教えてもらった。

「俳句鑑賞は創造」という心に刻んだ文章を一つ紹介する。

「あらためていうまでもなく、俳諧は十七文字の詩である。もし、たった十七文字のなかに詠まれる詩句が実景や実感を盛り込んだだけのものだとしたら、さして意味のない事実の描写に終わってしまうことだろう。だが、そこに使われる言葉に、さまざまな象徴を読み取ることによって、この短詩は魂の深みへと達することができるのだ。

むろん、その寓意が鑑賞者に届かないこともあろう。反対に、作者が意図していない意味を鑑賞者が読み込む場合もある。その境が曖々としているところにこそ俳諧の妙味があるといえる。

言葉をかえていうなら、俳諧の真髄とは、解釈の自由を最大限に許す点に存するのであり、作者にとってはその片言隻句に寓意をいくらでも秘めることができる、ということにあるのだ。

この意味で俳諧の鑑賞は、同時に創造でもある。」

それでは、あなたは次の句をどのように鑑賞しますか。

凧(いかのぼり)きのふの空の有りどころ 蕪村

昨日は、たしかにあそこら辺の空に挙がっていた凧。
では今日は、挙がっているのでしょうか、それとも挙がっていないのでしょうか。

私はこの句はずっと今日は凧が挙がっていないと解釈していたが、全集の解説を読んでびっくり。真逆の誤解をも許す鑑賞の面白さを知った。

シャクヤク

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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