読書逍遥

読書逍遥第242回 『フェルメールと天才科学者』(その3)

冨田鋼一郎

『フェルメールと天才科学者』(その3)

副題 17世紀オランダの「光と視覚」の革命
ローラ・スナイダー著

ものの見方を変えた二人、フェルメールとレーウェンフック

レンズの虜になって普段見ることのできない微細な世界を発見した立役者

世界は肉眼では見えないほどの小さな生物があらゆる所に満ち溢れていていること

世界は見かけ通りのものではないと言う認識が急速な勢いで広まった時期

普段の様々な現象の背後には、不可視の世界があるということに気づく

観察重視という点で、芸術家と科学者が合体したと言われる所以だ。

本書の指摘に以下のことを思った

芸術家は科学者よりも「個性」を大切にする点で、より人間的なのではないか

☆☆☆

「現実世界」と「想像世界」の探究

この発見は、あくまで「自然科学の話」、普遍的な事柄だけを追求する学問

しかし、人間の意識には現実世界に働く「知覚作用」だけでなく、非現実世界にも力を発揮する「想像力」を持っている

人間は、現実を離れて想像の世界(信仰・神話・ファンタジー・妖怪etc)に浸り、イメージを膨らませることができる

ことに優れた芸術家(画家、詩人、作家など)しかり

人には、他人がどう言おうと、「自分は○○を信じる」と言い切れるものが欲しい

その人の個性を形づくるものは、普遍的なものからは生まれない

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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