読書逍遥第221回 『オランダ紀行』(その10) 街道をゆく35 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
原題 ”The Triumph and Tragedy of J.Robert Oppenheimer”
月末に公開される映画「オッベンハイマー」を観るつもりで下準備をすることにする
(裏表紙 中巻)
ロスアラモス国立研究所でオッペンハイマーが指揮する原爆開発は徹底した情報統制のもと進められた。ジョン・フォン・ノイマンの発見により爆縮というアイディアを得たチームは、1915年7月16日、人類初の核実験を成功させる。そして「雲のある日は爆撃しないこと」というオッペンハイマーの言葉を守るように、日本時間8月6日午前8時14分、よく晴れた空から原子爆弾リトル・ボーイが広島に投下された。
(裏表紙 下巻)
「私の手は血で汚れている」
戦後、オッペンハイマーは、タイム紙の表紙を飾るなど時代の寵児となるも、水爆開発や核拡散に反対。核の国際管理を訴えるが、かつての研究仲間や政府と対立し、孤立を深めてゆく。そして冷戦下、ソ連のスパイ容疑をかけられた彼は公職追放され、その生活をFBIの監視下に置かれた。人類に原子力と言う新しい火もたらした科学者の全てを圧倒的筆力で描ききった名著、終幕。