読書逍遥第119回 『フランシス・クリック 遺伝暗号を発見した男』マット・リドレー著
冨田鋼一郎
有秋小春
今回は、イギリスから飛び立った飛行機でオランダ国土を見下ろし、着陸した時
まだオランダに着く前なのに、美しい詩的な文章が続く
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眼下で海がおわり、陸の灯が見えてきた。
高度をさげるにつれて、闇の地上に、立体なのか平面なのか、黄金の千代紙をあちこちに置いたようなものが輝いている。
どうやら、灯の入った温室らしい。
トルコ原産のチューリップを観賞用につくりあげたこの国は、いまも花を世界に売る国である。
温室が、夜の風情をつくっているのは、無用の灯がないからにちがいない。
[そして、着地の際の表現]
英国人機長による飛行機が、紙風船が地に触れるようなやわらかさで、着陸した。
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″紙風船が地に触れるようなやわらかさで″
うまい!手に取るように分かる
こんな文章に出会うと呼吸がゆるやかになる
「夜の風情」
“夜の静寂(しじま)”という言葉があった
もうこの言葉は絶滅危惧語になってしまったようだ
コマーシャリズムに毒されて、「不夜城」を文明の証しと勘違いしてしまった日本
東京のケバケバしいネオンには反省させられる
夜も昼間のように明るいマジソンスクエアガーデンが、文明のたどりついた理想の街だとアメリカ人が勘違いしたのと同じ
都庁第一本庁舎のプロジェクションマッピング「TOKYO Night & Light」は、この無神経さの延長にある