読書逍遥

第6回『チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力』「ボリス・ジョンソン著(プレジデント社2016)」

冨田鋼一郎

『チャーチル・ファクター たった一人で歴史と世界を変える力』「ボリス・ジョンソン著

イギリス現首相、ボリス・ジョンソン(当時ロンドン市長)が、チャーチル没後50年(2015)を機に出版した。

彼は当時市長2期目、2012年ロンドン五輪を成功させ、国政に進出を狙う充電期だった。

未曾有の危機に直面したリーダーに求められる資質とは何か。
単なる伝記ものではなく、自らの肥やしになるものをチャーチルに探った。
ジョンソンの心の中で二人は対話を続けたことが伺える。

EU離脱を巡り、長く世論が分裂し、混迷を深める最中、彼は離脱に踏み切った。
国際社会のなかでの収まるべき自国の立ち位置とは?チャーチルから学んだことは多かっただろう。

今コロナ禍の国難、さらに離脱後のイギリスをどこに導いていくのか、今日的な問題意識のもとに執筆された優れた著述だ。

本書でユーラシア大陸の反対側の島国で起きたことを知って、我身に置き換え黙考したい。
カバーの有名な顔写真は、世界的肖像カメラマンのユーザフ・カーシュによるもの。

個人的なチャーチルとの思い出をひとつ。
大昔、日本橋三越でチャーチル油絵展を見た。
そのなかに小品「マグノリア(木蓮)」の乳白色の肉厚な花弁に見惚れてしまった。
彼の絵画は今億円単位だそうだ。
そろそろハクモクレンの季節が巡ってくる。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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