読書逍遥第218回 『オランダ紀行』(その7) 街道をゆく35 司馬遼太郎著


『オランダ紀行』(その7) 街道をゆく35 司馬遼太郎著
フリースラント地方 州都フローニンゲン
ライデン ホールン マーストリヒト
旅はまだ半分も進んでいない
☆☆☆☆
[フリースラント]
北海に面したさびしい地方
古代フリース人は海面すれすれの地に住む
オランダ王国に属していながら、いまもフリース語を使い、ときにオランダからの独立が叫ばれたりする 州都フローニンゲン
ホイジンガ(1872-1945)
北方の僻地フリースラント出身
「ヨーロッパの繊維質そのもののような知性を備え、さらには都市的な柔軟さをその思想にも文体にも持っているのだが、ヨーロッパ文明そのものを覆うようなものの考え方は、かえって辺境の地から出るものなのだろうか」
☆☆☆☆
[ライデン]
[ホールン]
ホールンは、17世紀の街並みが美しい。
埠頭にある古い塔も美しく、塔の上の雲までが、17世紀の銅板画の中から抜けてきたようである。
はるかなアジアの海から帰ってきた船が、角笛(ホルン)の中につつみ込まれるようにして最後の投錨をする港なのである。次が、(東インド会社)本社のあるアムステルダム港なのだが、船乗りたちはホールンに来て、命が無事だったことを祝いあったろう。
[マーストリヒト]
マース川が貫くオランダ南部の町
西へ行けばベすぐルギー国境、東へ行けばすぐ西ドイツ国境である
国境がこのように《やわらかいものになる》
のに、ヨーロッパでは新世紀、あるいはそれ以上、戦争を重ねてきているのである
ナポレオン戦争から第二次世界大戦までの戦争は、要するに国境を外へ押し広げたり、内へ縮めさせたりするための運動で、もしこの国境線上に数世紀の戦死者の墓標を立て並べるとすれば、十万、百万といった墓標の列ができるに違いない。
それがばかばかしくなって今のようにのどかになっている。
ついには、国境は無用のものだ、あるいは、西ヨーロッパはひとつである、という思想が西ヨーロッパで共通のものになろうとしている。
さらにはEC(ヨーロッパ共同体)への各国民の期待がオランダはもとよりだが、《赤ん坊の体温のようにあつい》。