読書逍遥第146回 『地球曼荼羅 世紀末を歩く』森本哲郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
最初から意表をつく話ではじまる。
著者の頭の中で、咸臨丸、エジソンの電球、杉田玄白のターヘル・アナトミアとつながって、ようやくオランダにたどり着く。
咸臨丸で勝海舟、福沢諭吉らが(そして通訳としてジョン万次郎も)アメリカに西海岸にたどり着いたのは、安政7年(万延元年1860)の春。
エジソンが実用的な電球を発明して、世界中を明るくするのは、咸臨丸の渡米よりも19年後のこと。
さらに杉田玄白(1733-1817)がオランダ語の解剖書にある精密な解剖図に魅了される。
解剖図の話から、ここでまたお得意の脇道にそれる。
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“ついでながら”、絵画が純粋芸術などとされるのは近代に入ってからで、それ以前は–宗教画以外は–建築、機械学、医学といった諸技術の良き伴侶の一技術であった。
解剖学の歴史は、絵画に助けられて発達した。特に絵画ミケランジェロ(1475-1564)の精密な解剖図の出現によって飛躍したと言われている。
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いつの間にか読者は著者の世界に引き込まれていく。