読書逍遥第437回『日本史の謎は「地形」で解ける』【文明・文化編】(その10) 竹村公太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
各巻六百から七百ページの大部だが、コットン紙を使用しているので非常に軽い。
大正期の装丁、造本、見開き木版画。このような手の込んだ全集は、もう出版されることはないだろう。
書物出版の全盛期はその辺りの時期にあった。今は退潮著しい。
編集委員は河東碧梧桐、高濱虚子、香取秀真、寒川鼠骨だが、実質的な作業は柴田宵曲に頼った。子規の遺した膨大な自筆稿本にあたり、彼が清書した読解力は他の追随を許さない。
柴田宵曲は日の当たる所を歩まず、いつも脇役に徹した人生だった。
愛読しているのは、第二巻の自筆俳句集「寒山落木」。翻刻なしで肉筆原本そのままを掲載してある。
⭕️かひなしや水引草の花ざかり 子規