読書逍遥

読書逍遥第154回 『科学文明の起源』ジェイムズ・ポスケット著 2023年

冨田鋼一郎

『科学文明の起源』ジェイムズ・ポスケット著 2023年

原題 
HORISONS
A Global History of Science

副題 
近代世界を生んだグローバルな科学の歴史

近代科学はヨーロッパだけで生まれたのではない。ではどこで生まれたのか?

1543年 コペルニクス 地動説
1610年 ガリレイ 木星衛星観察
1687年 ニュートン 運動の法則
19世紀 チャールズダーウィン 自然選択進化の理論
20世紀 アインシュタイン 特殊相対性論

近代科学は、1500年から1700年までにヨーロッパだけで編み出され、世界の科学分野の主導権を握った。これは現代史の中で、最も広く流布する神話の1つである。 

近代科学の歴史は、ヨーロッパだけでなくグローバルな歴史における数々の重要な瞬間に当てはめて考える必要がある。

グローバルな歴史がどのように近代化を方向づけたのかを示す意欲的な本。

第一部
科学革命 
1450年頃から1700年頃

第二部
帝国と啓蒙
1650年から1800年頃

第三部
資本主義と紛争
1790年頃から1914年

第4部
イデオロギーと戦争の余波
1914年から2000年頃

ヨーロッパ中心の科学史を覆す!
科学革命は大陸を越えた文化交流と、古今東西の知られざる科学者のたゆまぬ努力によってもたらされた。
現代世界の見方を変える、かつてない視点で描く近代科学の発達史。

コペルニクスやガリレイ、ニュートン、ダーウィン、アインシュタインといった科学者の名前は、誰もが知っている。
そして、近代科学は16世紀から18世紀までにヨーロッパで誕生し、19世紀の進化論や20世紀の宇宙物理学も、ヨーロッパだけで築かれたとされている。
しかし、科学技術史が専門のウォーリック大学准教授、ジェイムズ・ポスケットによれば、このストーリーは「でっち上げ」であり、近代科学の発展にはアメリカやアジア、アフリカなど、世界中の人々が著しい貢献を果たしたという。

科学の未来は、グローバリゼーションとナショナリズムという2つの力の中間の道を見つけられるかどうかに懸かっている。
政治やイデオロギーによって書き換えられてしまった科学の歴史を明らかにし、科学発展のグローバルな過去をつまびらかにすることで、科学の未来について考えさせる書。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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