読書逍遥第125回 『フリーエージェント社会の到来』ダニエル・ピンク著
『フリーエージェント社会の到来』ダニエル・ピンク著
副題 「雇われない生き方」は何を変えるか
原題 FREE AGENT NATION
The Future of Working for Yourself
帯文 組織人からフリーエージェントへ!
組織に属さない働き方とは何か。とても刺激的な本だった。
本書を読んだのは20年も前になる。日本もアメリカ社会のようにフリーエージェント化するのかと、思いながら読んだ。
[フリーエージェントの定義]
インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会と繋がっているビジネスを築き上げた人々」のこと。
振り返ってみると、日本でこの30年間進んできた流れは、フリーエージェント化ではなく、組織に庇護されずに従属した大量の「非正規」が生み出されてきたこと。
フリーエージェントと非正規の違いは、組織から「独立して自分の才覚をもとに社会と繋がっているか」、否かだ。
要は「個人の自立」が確立しているかどうか。ムラ社会で生きてきた我々には、「自立したた個人」の意識が希薄だ。
人口の急速な減少下、あらゆる職種で人手不足が問題になっている。非正規や外国人の労働力だけをつまみ食いしようとするやり方はもはや持続不可能にみえる。
そして公務員・大企業志向の正規社員だけを庇護してきた「タテ」社会を温存しようとしても国の問題を解決できないだろう。
そうは言っても、インターネットと地域コミュニティを活用した「ヨコ」のネットワークがずいぶんと存在感を増してきた。出版や広報・広告など一部の業界ではすでにフリーエージェント化している。
新しく広がりつつあるヨコ社会では、真の意味で「自立した個人」が試され、これまで以上に女性の活躍の場が開けてくるような気がする。
コロナ禍でのリモートワーク進展も追い風だ。ヨコに繋がった若者たちの活躍に大いに期待している。
話は逸れるが、ジャニーズ問題でタレントの「エージェント契約化」が話題になっている。
これも大前提は、「自立した個人」であること。事務所の庇護に慣れたタレントが果たして「自立」の重みを受け止める用意ができているのだろうか。
個人としての生きがいの実現に向けて、ここでも新たな試練に向き合う日本だ。
著者ダニエル・ピンク(1964- )は、若くしてアル・ゴア副大統領のスピーチライターだった人。