読書逍遥第233回 『オホーツク街道』(その3) 街道をゆく38 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
スコットランドの探検家、マンゴ・パークのニジェールでの探検をたどる
コロンブスが、1500年新世界への第3回航海後に、「遠くへ旅すればするほど学ぶことが増える」と言った。
その通りだ。「旅」とは、文字通りの旅だけでなく、自分の知らない分野に興味を持つことも「旅」である。遠くにあった事柄が身近になることがすなわち学びだ。
本書は、19世紀マンゴ・パークが探検したニジェール川を森本哲郎が辿った紀行文。
私も、遠くにあって知らないサハラ砂漠以南のこの乾燥地・サヘル地域を、著者の思索にすがりながら旅をすることにしたい。
以下、1796年筆舌に尽くしがたい苦労しながら歩むニジェール河畔でのマンゴ・パークの独白。
「足元に小さな実を結んでいる苔のこの世ならぬ美しさ」に打たれたパークは、「こんな一顧だに値しないような植物を地の果てに植えて水を与え、完璧なものに仕立てあげた神が、神自身の姿にかたどってつくられた人間の苦しみを見過ごすはずがあろうか。」と確信し、そして絶望から立ち上がった。