読書逍遥

読書逍遥第167回 『私のニジェール探検行』森本哲郎著1982刊

冨田鋼一郎

『私のニジェール探検行』森本哲郎著1982刊

スコットランドの探検家、マンゴ・パークのニジェールでの探検をたどる

コロンブスが、1500年新世界への第3回航海後に、「遠くへ旅すればするほど学ぶことが増える」と言った。

その通りだ。「旅」とは、文字通りの旅だけでなく、自分の知らない分野に興味を持つことも「旅」である。遠くにあった事柄が身近になることがすなわち学びだ。

本書は、19世紀マンゴ・パークが探検したニジェール川を森本哲郎が辿った紀行文。

私も、遠くにあって知らないサハラ砂漠以南のこの乾燥地・サヘル地域を、著者の思索にすがりながら旅をすることにしたい。

以下、1796年筆舌に尽くしがたい苦労しながら歩むニジェール河畔でのマンゴ・パークの独白。

「足元に小さな実を結んでいる苔のこの世ならぬ美しさ」に打たれたパークは、「こんな一顧だに値しないような植物を地の果てに植えて水を与え、完璧なものに仕立てあげた神が、神自身の姿にかたどってつくられた人間の苦しみを見過ごすはずがあろうか。」と確信し、そして絶望から立ち上がった。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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