読書逍遥

読書逍遥第129回 『21世紀事典』(原書1998年刊) ジャック・アタリ

冨田鋼一郎

『21世紀事典』(原書1998年刊) ジャック・アタリ

<これからの世界・時代についてだれもが抱く疑問>

21世紀は、20世紀と何が異なるのか。
新しい世紀の特徴を事典の形で例示した。フランスの碩学・知の巨人は、今世紀初頭に洞察してくれていた。読者を思索に誘う本。

・人類をみな養うことははたしてできるのか?
・貧困を根絶できるのか?
・すべての人に仕事はあるのか?
・富はどの地域に集中するのか?
・科学は人生のあり方、苦しみ、死、教育、娯楽といったもののあり方を変えるだろうか?
・どんな企業が生き延びるのか?
・どんな野心、どんな冒険が人びとを熱中させるのか?
・どんな戦争、どんな環境破壊が脅威となるのか?
・自由と連帯の間の矛盾や、移動と定住の間は調整されるのか?
・宗教や政治はどんな位置を占めるのか?
どんな風俗が許されるのか?
・西欧は支配的な文明であり続けるのか?
・アメリカはその地政学的優位を維持し続けるのか?
・ヨーロッパは政治的勢力となるのか?
・フランスは世界情勢について言うべき言葉をもち続けるのか?
・そしてイスラムは?
・市場や民主主義を越えるものは何かあるか?
・革命は再び可能か?
・人びとはまだ一緒に生きていくことができるのだろうか?

☆☆☆

【21世紀とは】

「炸裂し、歓喜にみち、野蛮で、幸福で、常軌を逸し、怪物のようで、生存不可能で、解放的で、恐ろしく、宗教的で、あるいは無宗教である・・・・これが21世紀だろう」

「20世紀は悪魔の世紀だった。20世紀が次代に遺贈するのは、とても生きてはいけない世界である。

貧しい人びとは、崩壊した都市に住むことを余儀なくされ、息をすることさえできず、――悲惨の中で窒息してしまう。

その一方で、富は豊かな者に集中し、種々の誘惑のもとに埋葬される、――(こちらは)豪奢のために窒息してしまうのである。」
☆☆☆

栃の木
鳳仙花

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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