読書逍遥

読書逍遥第143回 『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ著

冨田鋼一郎

『神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ著

原題 The Origin of Consciousness in the Breakdown of the Bicameral Mind

人類の意識の原点を、Bicameral Mind(ニ分心)という新しい概念で提示する。意識の誕生をめぐる壮大な仮説を提唱した。

復刊か。

3000年前まで人類は「意識」を持っていなかった! 古代文明は、意識を持つ前の「二分心」の持ち主による創造物。

★養老孟司さん(「i feel」出版部50周年記念号より)
「これは面白い本である。人がいつから言葉を持ったか、よくわからない。しかし、言葉を持ってから、いまのいままで、人が「同じ」であったはずがない。
それなら、はじめのうちはどうだったのだろうか。

著者は昔の人は「神の声を聞いていたのではないか」という。歴史や考古学の例を引きながら、それをきわめて説得的に語る。

だからこそ古い文献は「神の声が聞こえなくなった」という嘆きに満ちているのである。

著者の言い分が正しいかどうか、そんなことはじつはあまり問題でない。こうしたアプローチが大切なのである。

現代人はいまの自分こそが「正しい」自分だと思っている。その常識に合わない人を、病院に入れたり、収容所に入れたり、戦争で殺したりする。

迷惑だからと思っているのだが、どこまで本当に迷惑か、ていねいに見たことも、考えたこともない。そういう人たちのためにこの本がある。そう思ったほうがいいのである。」
序章  意識の問題
第一部 人間の心
  第1章  意識についての意識
  第2章  意識
  第3章  『イーリアス』の心
  第4章  <二分心>
  第5章  二つの部分から成る脳
  第6章  文明の起源
第二部 歴史の証言
  第1章  神、墓、偶像
  第2章  文字を持つ「二分心」の神政政治
  第3章  意識のもと
  第4章  メソポタミアにおける心の変化
  第5章  ギリシアの知的意識
  第6章  ハビルの道徳意識
第三部 <二分心>の名残り
  第1章  失われた権威を求めて
  第2章  預言者と憑依
  第3章  詩と音楽
  第4章  催眠
  第5章  統合失調症
  第6章  科学という占い

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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