読書逍遥

読書逍遥第138回 『所有と分配の人類学』松村圭一郎著

冨田鋼一郎

『所有と分配の人類学』松村圭一郎著

副題 エチオピア農村社会の土地と富をめぐる力学

Anthoropology of Possession and Distribution

私たち近代社会が、社会秩序の大前提としている「私的所有」について根本的な問いを投げかける。それは「わたしのもの」と「誰かのもの」のスキマから社会を問い直す。

エチオピアでのフィールドワークからヒントを得た所有を巡る思索。そこでは、「誰のものでも、みんなのものとして扱う」社会だ。

読みながらイギリスと日本の違いについても思い出した。

ヒースロー空港からロンドン市内への高速道路にトールゲートは見当たらない。大英博物館は入場料取らないから門もない。土地の私有形態も違う。

イギリスでは、重要インフラや貴重な文化財は日本のような「国のもの」ではなく、「国民のものである」という考え方が根底にある。

日本固有の「国宝、重文指定」という仕組みも文化財は国のものとの考え方によるのだろう。

最近、国立近代科学博物館のクラウドファンディングの成功が話題になった。これは文化財は国民のものだという意識の芽生えを感じる。

ならば、国民の文化財を皆がファンディングで支える。いっそのこと国立博物館は入場無料にしたらどうかと思う。それが観光立国の名に相応しい。

はやりの「所有」から「レンタル」への今の流れについてにも思いは広がっていく。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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