読書逍遥第282回『長江・夢紀行』(その2) さだまさし中国写真集 1983年発行
冨田鋼一郎
有秋小春
副題 エチオピア農村社会の土地と富をめぐる力学
Anthoropology of Possession and Distribution
私たち近代社会が、社会秩序の大前提としている「私的所有」について根本的な問いを投げかける。それは「わたしのもの」と「誰かのもの」のスキマから社会を問い直す。
エチオピアでのフィールドワークからヒントを得た所有を巡る思索。そこでは、「誰のものでも、みんなのものとして扱う」社会だ。
読みながらイギリスと日本の違いについても思い出した。
ヒースロー空港からロンドン市内への高速道路にトールゲートは見当たらない。大英博物館は入場料取らないから門もない。土地の私有形態も違う。
イギリスでは、重要インフラや貴重な文化財は日本のような「国のもの」ではなく、「国民のものである」という考え方が根底にある。
日本固有の「国宝、重文指定」という仕組みも文化財は国のものとの考え方によるのだろう。
最近、国立近代科学博物館のクラウドファンディングの成功が話題になった。これは文化財は国民のものだという意識の芽生えを感じる。
ならば、国民の文化財を皆がファンディングで支える。いっそのこと国立博物館は入場無料にしたらどうかと思う。それが観光立国の名に相応しい。
はやりの「所有」から「レンタル」への今の流れについてにも思いは広がっていく。