読書逍遥第134回 『比島虜因記』山田淳一著昭和30年刊
冨田鋼一郎
有秋小春
兼好(1283頃-1352頃)鎌倉時代末期の歌人。
副題:世の中の秋田刈るまでなりぬれば
露もわが身も置きどころなし
長く「徒然草」に接してきた著者の集大成とも言うべき労作。「徒然草」と300首に満たない和歌を見渡して、その結び目に垣間見えてくる人間兼好に迫る試み。みずからの言葉の力によって自身の精神を変化・成長させてゆく跡をたどる。
特に、「徒然草連続読み」による第四章「青春の兼好」、兼好の捉えた3態の時間認識を扱った第5章「批評家誕生」、第6章「兼好のゆくえ」は読み応えがある。