読書逍遥

読書逍遥第135回 『漱石追想』

冨田鋼一郎

『漱石追想』

宅に出入りの植木屋の漱石追想 

漱石は、日頃から庭の草木を観察していた。

出入りしている植木屋を呼んで、一つひとつ説明させ、手帳に書き付けていたという。

庭に植えられていたのは、

隠れ蓑 椿 比翼ヒバ 銀杏 檜 百目柿 楓 錦糸梅 他行の松 小梅桜 芭蕉 竜の髭 木賊 金蓮花 雁来紅(葉鶏頭) 雛芥子(虞美人草) かんな(壇特) 浜菊 美女柳 君子蘭 

ふたりの「美女柳と錦糸梅」のやりとり。

☆☆☆

「あそこにある、あの黄色い花は何だ」
「あれは錦糸梅です」
「何時か錦糸梅だと云ったのとは、葉が違うじゃないか」
「あそこにある黄色い花はと云われるもんだから、うっかりそう答えたのです。ああ、あれなら美女柳です。間違えました」と言い直しました。
「知らないことは知らないと云え、間違えては困る」

☆☆☆

これらの普段の努力が小説の描写に活かされるこのになる。

芭蕉と木賊を特に愛した漱石。屋敷跡は、新宿区立漱石山房記念館になっている。

[金糸梅]

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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