読書逍遥

第82回『こころの読書教室』河合隼雄

冨田鋼一郎

『こころの読書教室』河合隼雄

笑顔を絶やさない人だが、眼光は鋭い。人間という存在のもつ底知れなさを畏怖と驚きをもって身続けた人。
子どもの本をじっくりと読んで、自分の心と向き合う。こんな作業をしたことがなかった。

■著者からのメッセージ
心に関心を持つ人が増えてきた.「本を端から端まで読んでほしい!」という願いをこめて,こんな企画を考えてみた.じっくり一冊を読んでこそ著者の心が伝わり,自分の心のこともわかってくる.私にそのような貴重な体験をさせていただいた本――子どもの本も絵本も――を取り上げて,それについて語りながら,人間の心のあり方について考えてみたい.
その中からひとつ。
ルーマー・ゴッデン 『ねずみ女房』
家ねずみの夫婦の女房ねずみはなぜか、自分にないものが気になる。「自分の知らない何か。けれども、大事なことがあるのだ」。

そしてハトと知り合い、ハトは飛ぶのだといわれると、飛ぶということがわからず、思い悩んだあげく、最後、ハトの入っているカゴの扉をあける。

ここのところ、ほんとうに素晴らしいと思うのは、「あれが飛ぶことなんだ!わかった!」と言うのと、「ハトがいなくなる」というのとが、一緒なんですね。

人間ていうのは、ほんとうに大事なことがわかるときには、絶対に大事なものを失わないと獲得できないのではないかなと僕は思います。

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました