読書逍遥

読書逍遥第118回 読書逍遥『アフリカ史』山口昌男著

冨田鋼一郎

『アフリカ史』山口昌男著

漱石は、授業中に本の読み方についてこんなことを言っている。

「僕は一冊の本を、一回しか読まない。繰り返し読んでいたら、一生かかってもたくさん読めない。諸君も本を読むときは、生涯に一度しか読めぬものと思って読め。しかし、この本はと思うものは、字引を見るように何度も読んで、覚えてしまうことだ」(勝沼精蔵「教師漱石の回想」より)

「生涯に一度しか読めぬものと思って読め」と若い時に言われても納得できなかっただろう。しかし、残りの時間が少なくなり、ようやく分かるようになった。

最近、遠いアフリカの話題に注意するようになった。

この『アフリカ史』も手に取るのは最後だろう。何か心に留まる見方を見つけよう。

人類発祥の地からいきなり大航海時代に飛んで、奴隷貿易、植民地分割へと「暗黒大陸」というヨーロッパからの見方でしか理解できていない。

「知の道化師」によるアフリカ全史とはどのような視点なのか。

「アフリカをヨーロッパスタイルの歴史研究の植民地にしてはならぬ」という著者の言葉に耳を傾けてみる。

「ヨーロッパは進歩、アフリカは未開のまま」という偏見に満ちた見方に囚われてはならない。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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