読書逍遥第249回『街道をゆく 中国・びんのみち』(その3) 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
漱石は、授業中に本の読み方についてこんなことを言っている。
「僕は一冊の本を、一回しか読まない。繰り返し読んでいたら、一生かかってもたくさん読めない。諸君も本を読むときは、生涯に一度しか読めぬものと思って読め。しかし、この本はと思うものは、字引を見るように何度も読んで、覚えてしまうことだ」(勝沼精蔵「教師漱石の回想」より)
「生涯に一度しか読めぬものと思って読め」と若い時に言われても納得できなかっただろう。しかし、残りの時間が少なくなり、ようやく分かるようになった。
最近、遠いアフリカの話題に注意するようになった。
この『アフリカ史』も手に取るのは最後だろう。何か心に留まる見方を見つけよう。
人類発祥の地からいきなり大航海時代に飛んで、奴隷貿易、植民地分割へと「暗黒大陸」というヨーロッパからの見方でしか理解できていない。
「知の道化師」によるアフリカ全史とはどのような視点なのか。
「アフリカをヨーロッパスタイルの歴史研究の植民地にしてはならぬ」という著者の言葉に耳を傾けてみる。
「ヨーロッパは進歩、アフリカは未開のまま」という偏見に満ちた見方に囚われてはならない。