読書逍遥第130回 『海の歴史』ジャック・アタリ著
冨田鋼一郎
有秋小春
今日の草花は、ニゲラと蒲公英の綿毛。一体誰がこんな形を思いついたのだろう。それぞれ独自に創意工夫したのか。
植物は脳を持たず、人間や動物のように動き回ることもできないが、人間とは異なる驚くべき内面世界があることが明らかになりつつある。
著者は、植物は動物と同じように知性があるのではないかという直感(思いつき)から研究を始めたという。
植物を他の動物やコンピュータ、人間の脳構造などと比較することで、植物のイメージを「声なき下等生物」から「プランタ・サピエンス(賢い植物)」に引き上げてみせる。
著者は世界で唯一植物の知性を専門に研究するスペインの科学哲学教授。いつか地球外生命体の探索でも役立つかもしれない。
世界ではすぐに役立つものでなくてもオリジナリティある研究が大事にされる。
理研や大学での雇い止めが問題になっている。目先の成果だけを求める日本の文教政策はますます余裕のないものになっている。