読書逍遥第207回 『南蛮の道』司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
菅茶山 七絶「冬夜読書」。
(『黄葉夕陽村舎詩』より)
茶山の最も有名なこの七絶について、「幽玄の趣き」をそなえていると評する。
(解釈)
書物を読み散らかしたまま床にはつかない。散らばった筆を揃えて、机のまわりを片付けてながら、心に留まった個所をあれこれ反芻してみる。
この鎮まった時間こそ、疑義に思いをめぐらせ乱雑になった頭の中も整理整頓する大事なひと時だ。
いつの世も人々はこれを繰り返してきたので、この詩は共感をもって読まれてきた。
父の短歌を思い出す。
⭕️使いたる鉛筆まとめて削りおき
今日の終りの筆箱を閉ず
☆☆☆
冬夜書を読む <菅茶山>
雪は山堂を擁して 樹影深し
檐鈴(えんれい)動かず 夜沈沈(ちんちん)
閑(しづ)かに乱帙(らんちつ)を収めて 疑義を思う
一穂の青灯 万古(ばんこ)の心
[スタバの写真にコーヒー生産者のことを想う]