読書逍遥

読書逍遥第149回 『江戸後期の主人たち』(その2)富士川英郎著

冨田鋼一郎

『江戸後期の主人たち』(その2)富士川英郎著

菅茶山 七絶「冬夜読書」。
(『黄葉夕陽村舎詩』より)

茶山の最も有名なこの七絶について、「幽玄の趣き」をそなえていると評する。

(解釈)
書物を読み散らかしたまま床にはつかない。散らばった筆を揃えて、机のまわりを片付けてながら、心に留まった個所をあれこれ反芻してみる。
この鎮まった時間こそ、疑義に思いをめぐらせ乱雑になった頭の中も整理整頓する大事なひと時だ。

いつの世も人々はこれを繰り返してきたので、この詩は共感をもって読まれてきた。

父の短歌を思い出す。

⭕️使いたる鉛筆まとめて削りおき
      今日の終りの筆箱を閉ず

☆☆☆

冬夜書を読む <菅茶山>

雪は山堂を擁して 樹影深し
檐鈴(えんれい)動かず 夜沈沈(ちんちん)
閑(しづ)かに乱帙(らんちつ)を収めて 疑義を思う
一穂の青灯 万古(ばんこ)の心

[スタバの写真にコーヒー生産者のことを想う]

スポンサーリンク

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
記事URLをコピーしました