読書逍遥

第72回『詩人与謝蕪村の世界』森本哲郎

冨田鋼一郎

『詩人与謝蕪村の世界』森本哲郎

すっきりとした目次が目を引く。
野路
冬鶯
与謝海
学校
宜風
灯影
茨野
胡蝶
牡丹
東山
雉子
芥子園
時雨
白梅
桃源
斜日
鴛鴦

これまでの幾多の蕪村評論のなかで、蕪村の魂に最も肉薄し得た本。このような章立てで蕪村句を縦横に(立体的に)論じたものを見たことがない。

著者は詩の第一級の鑑賞家である。蕪村を深く読み込んだ上で、「人間蕪村」に迫ろうとする。明解な言葉で語り尽くす。驚くべき力量だ。

私がブソニストになることができたのはこの本のおかげだ。初版は昭和44年。半世紀も前の本書を超えるものはまだ出ていない。

近世俳文学の専門家でない文筆家の手によるものであることが興味深い。文芸・美術の鑑賞にはなにも専門家である必要はないのだ。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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