読書逍遥

第73回『幸福論』(The Conquest of Happiness)バートランド・ラッセル(1872-1970)

冨田鋼一郎

『幸福論』(The Conquest of Happiness)

20世紀を代表する常識人の幸福論。不幸の原因を探った上で、幸福をもたらすものを具体的に明らかにする。1930年出版。

究極のポジティブシンキング。エッセンスは、三点。

  1. 自分が一番望んでいるものが何であるかを発見して、徐々にそれらを数多く獲得してきたこと。
  2. 望んでいるもののいくつかを本質的に獲得不可能なものとして上手に捨ててしまったこと。
  3. 自分の欠点に無関心になることを学び、だんだん注意を外界の事物に集中するようになったこと。

この歳になって読み直してみると、思い当たる事が多くなり、昔よりよく理解できる。

不幸をもたらす原因として、「競争」「退屈と興奮」「疲労」「嫉妬」「罪悪感」「被害妄想」「世論に対する恐怖」の章立て。自分を不幸に陥れるものの見方や考え方をしないこと。

幸福をもたらすものは、「熱意」「愛情」「家庭」「仕事」「非人間的な興味」「努力とあきらめ」と章立てが続き、幸福とは、我を忘れることにあるという。

あまりに常識的と思えるものの、読み進めるうちに不思議に心が温まり、そっと励ましてくれているような錯覚を覚える。

社会に「寛容の心」が増大するようにと説く著者。コモンセンス(常識)は何処へいったのだろう。変貌したイギリス、混迷する今の社会(世界)をどう診断してくれるのだろう。一度ラッセルの言葉を聴いてみたい。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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