読書逍遥第320回『文明の主役 エネルギーと人間の物語』(その18) 森本哲郎著 2000年発行
冨田鋼一郎
有秋小春
20世紀を代表する常識人の幸福論。不幸の原因を探った上で、幸福をもたらすものを具体的に明らかにする。1930年出版。
究極のポジティブシンキング。エッセンスは、三点。
この歳になって読み直してみると、思い当たる事が多くなり、昔よりよく理解できる。
不幸をもたらす原因として、「競争」「退屈と興奮」「疲労」「嫉妬」「罪悪感」「被害妄想」「世論に対する恐怖」の章立て。自分を不幸に陥れるものの見方や考え方をしないこと。
幸福をもたらすものは、「熱意」「愛情」「家庭」「仕事」「非人間的な興味」「努力とあきらめ」と章立てが続き、幸福とは、我を忘れることにあるという。
あまりに常識的と思えるものの、読み進めるうちに不思議に心が温まり、そっと励ましてくれているような錯覚を覚える。
社会に「寛容の心」が増大するようにと説く著者。コモンセンス(常識)は何処へいったのだろう。変貌したイギリス、混迷する今の社会(世界)をどう診断してくれるのだろう。一度ラッセルの言葉を聴いてみたい。