読書逍遥

第87回『「未来」とは何か』デイビッド・クリスチャン(パート2)

冨田鋼一郎

『「未来」とは何か』デイビッド・クリスチャン

第二部までの途中経過

原題:Future Stories  What’s Next? 2022刊

1秒先から宇宙の終わりまでを見通すビッグ・クエスチョン。薄っぺらな未来論ではない。

宇宙開闢以来の「ビッグヒストリー」の提唱者の歴史家が、今度は遠い未来までの考察に挑んだ。歴史家の眼で、思想哲学や生物学、人類学、脳科学、心理学、経済学など諸科学の知見を踏まえて、未来を見据える意欲的で重厚な本だ。

出発点は、「時間」についての哲学的議論。時間の捉え方は二つあるという。

第二部では、「有機生命体」(細胞、動植物、人間)が目的志向性を持つことに着目し、未来を操つろうとする生命体に関する科学的知見を紹介する。動植物と細菌にまで視野を広げ、未来に備え・未来を想像しようとする人間について理解を深める。

本書の核となる部分は、最終の第三部「未来を想像する」。

著者の持てる宇宙観を披露するべく、諸科学から精一杯かき集めてきた。その意味では漱石さんが小説『吾輩は猫である』で自身を曝け出してくれたことと比較する。どちらが効果的だろう。

私は宇宙観・世界観・人間観を持っているのか。自分だったら、どのような話題をどのように組み立てるか。

最後のパート3は、「未来を想像する〜人間、天文学あるいは宇宙論」。

パート1 未来について考える
 〜哲学者、科学者、生物はどのように考えているか

パート2 未来を操る
 〜細菌、植物、動物はどのように未来を操るか

パート3 未来に備える
 〜人間はどのように未来に備えるのか

パート4 未来を想像する
 〜人間、天文学あるいは宇宙論

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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