読書逍遥第115回 読書逍遥『ぼくの頭の中』新宮晋著
冨田鋼一郎
有秋小春
しばらくイギリスに浸りたいと思って本棚に文庫本を手にした。
果たして最後に「戴冠式の行われるロンドン」(昭和28年)の文章を見つける。
昭和28年(1953)6月、エリザベス女王戴冠式に今の上皇さまが参列するにあたっての文章だ。
5月、6月のロンドンは一年のうちで最も美しい季節。イギリスの諺が紹介されている。
March wind, April showers
Bring forth mayflowers.
三月の風と四月の驟雨が
メイフラワーを連れて来る。
シェークスピアの故郷のエヴォン川、ケンブリッジをめぐるケム川と同様に、テムズ川上流の水は漫々と岸をひたして、ゆるやかに静かに動く、とある。
女王の葬儀は9月19日になったと聞く。秋の深まった時期の国を揚げての葬儀に、世界の目が集まる。
今の英国は多宗教、多民族国家として大きく姿を変えた。在位70年と簡単にいうが、人も社会も変貌するには充分な年月だ。
この写真は1975年来日時のクイーンズ・スマイル。