読書逍遥第160回 『ぼくの作文学校』森本哲郎著 1983刊
冨田鋼一郎
有秋小春
寺田寅彦の初期随筆『花物語』は、九つの花にまつわる高知で過ごした少年時代の思い出話だ。
その4番目に「のうぜんかずら」が出てくる。勉強に励む寅彦少年にとって、ノウゼンカズラの花が思い出に色を添える。
土佐藩高知城を囲むお堀脇に寅彦の生家(今は寅彦記念館)がある。庭には半夏生の群生があり、門柱に絡まるようにノウゼンカズラが咲いていた。
因みに、登場する花は、次の通り。
「昼顔」「月見草」「栗の花」「のうぜんかずら」「芭蕉の花」「野バラ」「常山の花」「りんどう」「楝の花」。