読書逍遥第188回 『細胞』(上・下)(その7)ジッダールタ・ムカジー著
『細胞』(上・下)(その7)ジッダールタ・ムカジー著
副題 生命と医療の本質を探る
原題 The Song of the Cell
An Exploration of Medicine and the New Human
下巻は、血液に続いて、「パンデミックの知識」「器官」「再生」へ移る。
細胞と言う概念や細胞生理学についての知識が、医学や科学、さらに生物学の分野にとどまらず、社会構造、文化を大きく変えてきた。
その歴史を網羅的に紹介する巨大な本だ。
「遠くへ旅すればするほど学ぶことが増える」
(コロンブスが西暦1500年、新世界への第3回目航海後に言った言葉)
これは、今、心に響いている言葉。
旅は何も地理的に遠くに出かけることだけでない。身近なことでも知らないことだらけで学ぶことはいくらでもある。要は、好奇心を抱けるかどうか。
[細胞の二面生]
各器官は分業して役割を果たして、同時に社会における市民としての使命を果たす
① どの細胞にも備わる基本的な性質
タンパク質合成、代謝、老廃物排出、自律性
② 個別器官に備わる特殊な機能獲得
[心臓] 生命個体において特別な役割
心拍数 鼓動 狭心症 心不全 心臓発作
一刻を争う心臓発作
(救急車の中で) AED 心電図データ病院転送 アスピリンと酸素投与
(病院で)検査 心臓カテーテル ステント 血栓溶解療法
「生物」と「社会」に似通う構造
・多細胞生物 細胞→器官→生命個体
・個人→家族→地域→都市→国→世界
一つ一つ、生きた細胞が集まって、1つの生命体を形作る
ウィリアム・ハーヴェイ1600年代
心臓は、血管を通して血液を体全体に送る「ポンプ」である 「血液は循環している」
心臓は収縮と拡張の繰り返し。一生の間一度も止まることのない精密な機械。特に左心室の心筋は、最も疲れを知らない筋肉
細胞からどのようなメカニズムで特殊なポンプをつくるのか
[心臓の仕組み]
左右に分かれている間の壁(心房・心室中隔)には血液が通過する穴がなく、完全な厚い壁である