読書逍遥

読書逍遥第136回 『生き方の研究』森本哲郎著

冨田鋼一郎

『生き方の研究』森本哲郎著

生き方の指針となるものを、古今東西39人の先人たちに探る。著者62歳の時の本。

単なる人物紹介ではない。一人ひとりの人生のなかにエッセンスとなる事柄を抽出してみせる。

それは目次に現れている。例えば、
・人生の短さ セネカ
・迷い 陶淵明
・三つの道 与謝蕪村
・忍耐 マンゴ・パーク
・才能 ブラームス
・よき晩年 王安石
・金銭 井原西鶴
・心のゆとり 兼好法師
・寛容 エラスムス
・反省 孔子など

著者の選球眼が試される意欲的な本だ。
「美しく考える人」森本哲郎の代表作の一つ。

1987年単行本の初版以来、何度手にしただろう。知らなかった先人を知ったような気になった。

「文庫版へのまえがき」の末文に衝撃を受けたのを覚えている。

「それにしても、どうして三十九人なのか。じつは四十人にしたかったのだが、最後の一人をあえて残すことにした。そのひとりとは、あなただからである」

そうか。読み終えたわたしは、今度は自分の人生をまとめ上げることを考える番なのだな。

こんなことも言っている。

「人は常に「不易流行」の知恵をもって、これからも生き抜いていくに違いない。古今を通じて変わらない価値観と、時代とともに変遷していく人生観をどのように調和させるか」

一人ひとりかげかえのない命を生きる。

私はどうまとめるの?自問自答を繰り返している。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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