読書逍遥第334回『南蛮の道』(その6) 司馬遼太郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
生き方の指針となるものを、古今東西39人の先人たちに探る。著者62歳の時の本。
単なる人物紹介ではない。一人ひとりの人生のなかにエッセンスとなる事柄を抽出してみせる。
それは目次に現れている。例えば、
・人生の短さ セネカ
・迷い 陶淵明
・三つの道 与謝蕪村
・忍耐 マンゴ・パーク
・才能 ブラームス
・よき晩年 王安石
・金銭 井原西鶴
・心のゆとり 兼好法師
・寛容 エラスムス
・反省 孔子など
著者の選球眼が試される意欲的な本だ。
「美しく考える人」森本哲郎の代表作の一つ。
1987年単行本の初版以来、何度手にしただろう。知らなかった先人を知ったような気になった。
「文庫版へのまえがき」の末文に衝撃を受けたのを覚えている。
「それにしても、どうして三十九人なのか。じつは四十人にしたかったのだが、最後の一人をあえて残すことにした。そのひとりとは、あなただからである」
そうか。読み終えたわたしは、今度は自分の人生をまとめ上げることを考える番なのだな。
こんなことも言っている。
「人は常に「不易流行」の知恵をもって、これからも生き抜いていくに違いない。古今を通じて変わらない価値観と、時代とともに変遷していく人生観をどのように調和させるか」
一人ひとりかげかえのない命を生きる。
私はどうまとめるの?自問自答を繰り返している。