読書逍遥

読書逍遥第114回 『「生きている」とはどういうことか』カール・ジンマー著

冨田鋼一郎

『「生きている」とはどういうことか』カール・ジンマー著

副題 生命の境界領域に挑む科学者たち
原題 LIFE EDGE
The Search for What It Means to Be Alive

本書は、「生きる」意味を問う哲学書ではない。
副題通り、サイエンスライターによる「生きている」とはどういうことかについての科学探究史だ。

特に最後の3章は読み応えがあった。
「設計図に必要なデータ」
「見てわかる茂みもない」
「四つの青いしずく」

1859年ダーウィン「種の起源」で残された課題は、「生命の起源」。

アレクサンドル・オパーリン
J.B.S.ホールディン
フランシス・クリック
スタンリー・ミラー
ハロルド•ユーリー
アレック・バンガム
デイビッド・ディーマー
ケイト・アタマラ
ロージー・バージ
スチュアート・カウフマン
レザ・ガデリ
キャロル・クリーランド
リー・クローニンなどの科学者が登場する。

日本人科学者は誰もいない。山中伸弥さんのiPS細胞の言及がないのは残念だ。

生命の起源の探究の視野は、地球を超えて南極アランヒルズ隕石、火星、土星衛星エンケラドスでの地球外生命体探査にまで広がる。

誰もが納得できる「生命の定義」はいまだに存在していない。
人類最大の謎は、宇宙の始まりと並んで、最初の生命登場のメカニズム。
生物と無生物を分かつものは、いったい何なのか?

「私たちは、生命という言葉が自分たちにとって何を意味するかを知りたいわけではありません。生命が何であるかを知りたいのです。」

個々の科学者の試みは些細なものであっても、総体として人類は着実に知の地平線を広げていることが実感できた。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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