読書逍遥

読書逍遥第106回 『中世ヨーロッパ全史』(その4)ダン・ジョーンズ著

冨田鋼一郎

『中世ヨーロッパ全史』(その4)ダン・ジョーンズ著

「その4」は「黒死病」を扱う「生き残りたち」の章から、ルネサンスのはじまり。

気候の変化。
1,000年頃から人口急増。農具、風車、水車、輪作で生産性向上と森林伐採、湿地排水による農地拡大で凌いできたがそれが限界に。火山活発化、大地震が襲った。

1,300年から1,850年は「小氷河期」にあたる。バルト海、テムズ川、コンスタンチノープル金角湾凍結。

14世紀半ばからの黒死病蔓延は深い傷を西洋社会を与えた。急激な人口減ももたらしたもの。

・鞭打ち苦行行進→神は怒っているので、神の怒りを宥めなければいけない。自傷を通して自らと人類の罪を償う。→完全隔離と反対の密でかえって感染拡大。

・労働力不足で賃金上昇と地代急落の破壊→土地に縛られていた農奴や都市部の貧民が激減し、人の労働価値が高まる。

・労働法強化の反動。地主と農奴、都市権力者と労働者とのせめぎ合いが続く。
農奴は生まれたときから土地に縛られ、結婚相続は領主の許可必要。黒死病後、労働法強化の動き。ワットタイラーの乱。

・既成権力に対抗する民衆の蜂起、反乱が各地で。

・教訓 民衆の力を侮ってはいけない。民衆の見方や関心を考慮しないと結局しっぺ返しをくう。長い紆余曲折を経て、人権意識が定着していく。

コロナパンデミックを体験した我々にとって、社会(世界)はどのように変質していくのか。
→100年単位だろうが、グローバルに人権意識が高まっていくはずだ。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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