読書逍遥第240回 『フェルメールと天才科学者』副題 17世紀オランダの「光と視覚」の革命
『フェルメールと天才科学者』副題 17世紀オランダの「光と視覚」の革命
原題 Eye of the Beholder
Johannes Vermeer, Antoni Van Leeuwenhoek, and the ReInvention of Seeing
ローラ・スナイダー著
17世紀デルフトの科学者と画家がもたらした「見る」ことについての一大転換
「不可視の世界」に挑み、科学革命のはじまりの時代を相携えて進む
(表紙見開き)
「不可視の世界」に挑んだ科学者と画家たち
1674年、オランダの小さな町デルフト。
素人科学者アントニ・フン・レーウェンフック(1632-1723) は自作の顕微鏡を使い、人類で初めて微生物を発見した。
そのとき、広場を挟んだ向かいに住む画家フェルメール(1632-1675)は、新しい光学機器カメラ・オブスクラを覗きこみ、光の効果をキャンバスに再現しようとしていた――
17世紀、「望遠鏡」と「顕微鏡」という新たな光学器機と理論、そして肉眼を超える驚異的な観測能力が大きな引き金となって「科学革命」が起こった。
その結果、天文学、物理学、生物学、解剖学、化学は大変貌を遂げる。そして〝ものの見方〟が初めて科学の中心理念とされた。
画家たちもまた、凸レンズや拡大鏡、カメラ・オブスクラを用いて自然界を観察し、昆虫や植物の細密画を描き、光と影、そして色彩と色調を捕らえようとした。
しかし、そこで大きな問題に行き当たる。「肉眼で見える範囲外のものを知覚することはできるのか」?
【目次】
プロローグ 見えないものを見る
第1章 自然を〝偽造〟するもの
第2章 獅子の街角の男
第3章 火と光
第4章 〝見る〟ための修業
第5章 絵のように、そのように見る
第6章 数学好きの芸術家
第7章 自然の宝物庫
第8章 災厄の年
第9章 目に見えない世界
第10章 生物の〈発生〉の秘密
第11章 科学界の獅子
第12章 新しいものの見方
エピローグ 敢えて見よ!
【著者紹介】
ローラ・J・スナイダー(Laura J. Snyder)
1964 年生まれ。アメリカの歴史家、哲学者、作家。科学教科書の出版社とテクノロジー企業専門の経営コンサルタント会社に勤務した後、ジョン・ホプキンズ大学で哲学の博士号を取得し、セント・ジョーンズ大学で21 年にわたって教鞭をとり続けた。国際哲学史学会元会長。
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画家は芸術の科学を学ぶべし。科学の芸術も学ぶべし。五感を磨くべし。そして何よりも”ものを見る眼”をきわめるべし。(レオナルド・ダ・ヴィンチ)
海外とは科学である。自然界の諸方策を追求する手段として学ばなければならない。つまり絵を描く事はまさしく実験をすると言うことなのだ。であれば、風景画自然哲学の1部とみなしても良いのではないだろうか。(ジョンコンスタブル(19世紀イギリスの風景画家))
芝居とは、自然を鏡に映し出すことだ。(ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』)