読書逍遥第156回 『そして文明は歩む』1980 森本哲郎著
冨田鋼一郎
有秋小春
人はひとり。
人はふたり。
このような矛盾のなかにあるのが人間。
自然の一部としての人間は、誰もかけがえのない唯一の存在、同時に全ての人間は、他人との関係のなかで生きる。
学校で集団で生きる技術ばかりを教え込まれ、家庭や社会では、「人はふたり」という面ばかりが求められる。
他人の立場に立ってものを考える人は、自分の考えを持つことが出来ず、ひいては考えそのものを持てなくなる。
大切なのは、他人といかに付き合うかではなく、自分自身といかに付き合うかだ。これは誰も教えてくれない。
’自分といかに付き合うか’とは、孤独という避け難い事実に如何に対処するかということ。
「孤独はあらゆる創造の源泉」と著者は言う。本書で採り上げた人物は、ニーチェ、ショーペンハウアー、グレン・グールド、ピューリツァー、ハワード・ヒューズ、モンテーニュ、ソロー、プルースト。
「自分が他人にとって、無用な、荷厄介な、迷惑となるこの没落の年齢には、自分が自分にとって、迷惑な、荷厄介な、無用なものとならないように注意しなければならぬ。自分を喜ばせ、自分を可愛がりなさい。とくに自分を抑えなさい。自分の理性と良心を敬い、畏れなさい」(モンテーニュ)
重い言葉を見つけた。
これからはますます一人で生きることが求められる時代になった。
「夢みて咲いている」ヤグルマギク・スイートピーと紫陽花