読書逍遥

第48回『脳の地図を書き換える』ディビッド・イーグルマン

冨田鋼一郎

『脳の地図を書き換える』ディビッド・イーグルマン

我々が知っている宇宙で最も複雑なシステムである人間の「脳」について、ここまで理解が進んでいることを知って感慨深い。

人間の脳はこの世に基本な構造だけの「未完成」の「生焼け」状態で生まれ、あとはそれぞれの人の「経験」が脳を作りあげていく。

経験に学びながら自らの回路を最適化させ続ける。
この柔軟でダイナミックな人間の脳の仕組みが他の動物と違うところ。

「人は誰しも大勢の人間の中のひとりとして生まれ、たったひとりの人間として死ぬ。」
(マルティン・ハイデッカー)

とかくこの世に「自分」と「世界」は別個にあると考えがちだ。

しかし、あなたという人間は、生を受けてからこれまで相互作用してきたすべての中から立ち現れてくる。
置かれた環境、経験、友人、ライバル、文化、信念、時代。
あなたが何者かはその全てによって決まる。

外の世界からの影響なしに「自分」など存在しない。
自らの信念、主義主張も、切なる願いも、何から何まで外の世界によって形作られている。
ちょうど大理石の塊から彫像が削り出されるように。
私たち一人ひとりがかけがえのない世界なのだ。

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ABOUT ME
冨田鋼一郎
冨田鋼一郎
文芸・文化・教育研究家
日本の金融機関勤務後、10年間「学ぶこと、働くこと、生きること」についての講義で大学の教壇に立つ。

各地で「社会と自分」に関するテーマやライフワークの「夏目漱石」「俳諧」「渡辺崋山」などの講演活動を行う。

著書
『偉大なる美しい誤解 漱石に学ぶ生き方のヒント』(郁朋社2018)
『蕪村と崋山 小春に遊ぶ蝶たち』(郁朋社2019)
『四明から蕪村へ』(郁朋社2021)
『論考】蕪村・月居 師弟合作「紫陽花図」について』(Kindle)
『花影東に〜蕪村絵画「渡月橋図」の謎に迫る』(Kindle)
『真の大丈夫 私にとっての漱石さん』(Kindle)
『渡辺崋山 淡彩紀行『目黒詣』』(Kindle)
『夢ハ何々(なぞなぞ)』(Kindle)
『新説 「蕪」とはなにか』(Kindle)
『漱石さんの見る21世紀』(Kindle)
『徹底鑑賞『吾輩は猫である』』(Kindle)
『漱石さんにみる良い師、良い友とは』(Kindle)
『漱石さん詞華集(アンソロジー)』(Kindle)
『曳馬野(ひくまの)の萩』(Kindle)
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